ヴェーダ占星術も西洋占星術も十二星座を使用します。この十二星座は、ゾーディアック(獣帯)に配置されているのですが、ゾーディアックの定義はヴェーダ占星術と西洋占星術では若干異なります。ヴェーダ占星術のゾーディアックはサイデリアル、西洋占星術のゾーディアックはトロピカルと呼ばれており、それらのゾーディアックの優劣について様々な論争が繰り広げられています。このレッスンでは、この2つのゾーディアックについて学びます。(清水)

サイデリアル(ヴェーダ占星術)とトロピカル(西洋占星術)の違い、そして占星術におけるそれぞれの位置づけをはっきり理解することは重要です。これを理解しておかないと、どちらかのシステムの方が優れているという偏見にとらわれて、それぞれの長所を無視してしまいかねません。


では、どうしてゾーディアックが2つもあるのでしょうか?ゾーディアックがひとつだろうがふたつだろうが、宇宙はちゃんと動いています。神さまが作った宇宙に間違はありません。ゾーディアックベルト(獣帯)では、毎日、牡羊座から魚座までの十二星座が東の地平線の幅16°の間をきちんと上昇します。そんなの、あたりまえの天文現象です。問題ありっこありません。ノー・プロブレム!!ニューデリーにいようが、ロサンゼルスにいようが、星はだれにでも等しく輝いています――なのに、なぜ東洋ではサイデリアルで、西洋ではトロピカルなのでしょうか?

サイデリアルでもトロピカルでも、牡羊座から魚座まで星座が12あるのは共通しています。それぞれの星座のエレメント(火、地、風、水)や性質(活動、不動、柔軟)も同じです。20世紀に天王星、冥王星、海王星が発見されるまで、どの星座をどの惑星が支配するかも同じでした。

ちなみに古典的な星座の惑星支配は、次のとおりです。

火星(牡羊座、蠍座)、金星(牡牛座、天秤座)、水星(双子座、乙女座)、月(蟹座)、太陽(獅子座)、木星(射手座、魚座)、土星(山羊座、水瓶座)

実際、2つのゾーディアックは、内容はまったく同じです。違いは、牡羊座がどこから始まるかにあるのです。



トロピカル・ゾーディアックを使う西洋占星術では、太陽が春分点を通過する3月21日を牡羊座の起点とします。このことから、それぞれの季節の始まりは、太陽が活動星座(牡羊座、蟹座、天秤座、山羊座)に入るときと重なることが、西洋の天文暦を見ればわかります。ですから、トロピカルのゾーディアックは、太陽と地球の関係を表したシンボリックなシステムであり、季節と対応しているといえます。

一方、サイデリアル・ゾーディアックを使うヴェーダ占星術では、太陽がいつ牡羊座に入るかは、実際の牡羊座を構成する恒星を基準に計算されます。季節とはいっさい関係ありません。サイデリアルのサイダー(Sider)とは、恒星という意味なのです。ですから、サイデリアルは、実存する天文星座(コンステレーション)に対する惑星の天文学上の配置を根拠としたゾーディアックなのです。サイデリアル・ゾーディアックは、シンボリックな星座宮(サイン)ではなく、観察可能な天体現象と対応しているのです。

デヴィット・フローリー博士は「The Astrology of the Seers」のなかで、次のように書いています。

「サイデリアル・ゾーディアックは観測できるゾーディアックなので、おそらく歴史的にゾーディアックのオリジン(起源)でしょう。トロピカル・ゾーディアックは、抽象的なゾーディアックであり、サイデリアルから派生したに違いありません。なぜなら、抽象的なものは必ずと言っていいほど観測可能なものに立脚しているからです」。

考えてみると凄いことだと思うのですが、古代のヴェーダのリシ(聖仙)たちは地軸の傾きが少しずつ変化していることを知っていました。ヨーロッパで地球が丸いかどうかで侃々諤々(かんかんがく)やっていたときよりも数世紀も前に、すでにヴェーダのリシたちは地軸の変化が天文暦の計算にどれだけ影響を及ぼすのかを正確に知悉(ちしつ)していたのです。

天望鏡やハイテクの助けを借りずに、リシたちは、恒星に対して春秋分点が72年に1°(年に50.3秒)の割合でゾーディアック上を後ずさりすることを知っていたのです。リシたちがこれを計算することができたということは、古代のヴェーダ文明が数学・天文学おいていかに進歩していたかを知る手がかりになります。

この現象は、春分の歳差運動(precession of the equinox)といわれます。春分時の太陽の位置が、ゾーディアック上を少しずつ後退する現象です。サイデリアル的に言うなら、2003年の春分時、太陽は魚座の6°03′に位置することになります。ですから、2003年3月21日現在、2つのゾーディアックの相違は、23°57′となるのです。

サイデリアルとトロピカルの数学的な差異は、サンスクリット語 でアヤナームシャ(ayanamsha)と呼ばれます。ちなみに1950年1月1日のアヤナームシャは23°09′でした。

しかし、やっかいなことに複数のアヤナームシャが使われています。しかもアヤナームシャによっては最大2°も違いがあるのです。世界のヴェーダ占星術家の多くは、インド政府公認のラヒリ(Lahiri)のアヤナームシャを使用しています。

歴史的に、2つのゾーディアックは紀元285年頃、同じであったのではないかという説が一般的に受け入れられています。その当時、どちらの天文暦においても、春分時に太陽が牡羊座に移動していたのです。ではどうして2つのゾーディアックは異なってしまったのでしょうか?いったいなにがあったのでしょうか?

いったいなにがあったのかは、わたしにはわかりません。しかしあきらかに、わたしたちの時代は、2つの異なるゾーディアックを受け入れているようです。

歳差運動のおかげで、11,232年後には、春分時に太陽が天秤座に移動することになります。さっそくカレンダーに書いておきましょう!そのときになると、2つのゾーディアックは正反対になるので、それぞれの違いについてたくさん説明することがあるはずです。アヤナームシャはちょうど180°00′です。その時代に転生して、論争に加わってみたいものです。